「顔面神経麻痺」という病気をどれくらい知っていますか?
有名人が発症を公表したりして、名前だけは知ってるという方もいると思いますが
「顔が動かない」という以上の事は具体的にわからない方も多いと思います。
そこで、臨床検査技師の資格を持つ私自身が学生時代に発症したときの事例も踏まえて、なるべく分かりやすくお伝えしていこうと思います。
顔面神経麻痺ってどんな病気?
顔面神経麻痺は、分かりやすく言うと「顔の片側がある日突然麻痺する病気」です。
時々「顔面神経痛」と勘違いしておられる方がいるんですが、基本的に痛みはありません。
顔面神経は痛みを感じる神経ではないからです。
じゃあ顔面神経痛ってなんだと言うと、顔面の痛みを感じる「三叉神経」という別の神経の病気で、正式名称は三叉神経痛なんです。
ややこしいですね。
また麻痺すると一言で言っても、後述する「顔面神経のどこに問題が起きたか」によって、症状の出方は様々です。
命に関わるものではないので不便で困るというのが一番大きいですが、人前に出る仕事をしている方の場合は表情がうまく作れない、唇が動かなくて喋りづらいなどで仕事にも影響が出てしまいます。
顔面神経麻痺の主な症状
まず顔面神経について簡単に説明しておきます。
…画力がなさ過ぎて申し訳ないですが大体こんな感じで、耳の裏あたりにある管を通り、少しずつ分岐しながら顔面を走っています。
実は顔面神経は顔の筋肉を動かすだけでなく、涙を出したり、唾液を出したり、味を感じたりする役割もしているんです。
つまり、目の辺りに繋がる枝が障害されると涙が出なかったり、顎の辺りに繋がる枝が障害されると味が分からなくなったりするわけです。
ちなみに私の場合は、顔が動かないのはもちろんのこと涙も出ないし味も分からなくなっていたので、だいぶ根元に近い所が障害されていたのだと思います。
私が最初に感じた異変は「なんか歯磨きしてる時やたら口から溢れちゃうな…」でした。
次の日の入浴時、洗顔やシャンプーの時にやたら目に染みるので、おかしいな~と鏡をまじまじ見てみたら顔の右半分が垂れ下がっていたんです。
その当時、顔の麻痺で真っ先に頭に浮かんだのが「脳梗塞」だったので、慌てて母に顔を見てもらったのですが「それ顔面神経麻痺じゃない?」と見事言い当ててくれました。
この時は私より母の方がよっぽど病気に詳しかった。笑
顔面神経麻痺の主な原因
顔面神経麻痺の原因は、大きく分けると3つあります。
外傷というのはつまり、交通事故などで神経が外から傷つけられることによって起こる麻痺です。
芸能人のビートたけしさんが交通事故で顔面神経麻痺を患ったという話は有名なので知っている人も多いと思います。
ウイルス感染かどうかは血液検査をすれば分かります。
家族との死別や大きな環境の変化など、客観的に分かるイベントがあればストレス性と診断されるかと思いますが、多くは原因不明と言われています。
私の場合は、大学に入学して1ヶ月くらいの時期に発症したので、ストレス性だろうと判断されました。
(顔面神経麻痺を発症するまでは特にストレスは感じてなかったんですがね…)
顔面神経麻痺の検査方法
顔の麻痺が本当に顔面神経麻痺によるものかどうか確かめたり、治療がうまく進んでいるか調べるための検査はいろいろあります。
顔面神経の麻痺を確かめる鐙(あぶみ)骨筋反射、ウイルス感染を調べるための血液検査、障害部位を確かめるMRI検査、顔の筋肉に電気を流して反応を見る瞬目(しゅんもく)反射などなど。
鐙(あぶみ)骨筋反射というのは、大きな音を聞かせたときに耳を守るための反応です。
顔面神経麻痺だとこの反射が出なくなるため、麻痺が出ていない側の耳より音が大きく聞こえます。(検査音で鼓膜やられそうでした…)
瞬目(しゅんもく)反射は、ちょっと痛い検査です。
医療脱毛経験者はわかりやすいかもしれませんが、ゴムで弾いたようなパチッパチッという刺激が何度も流れます。
その代わり脱毛と違って赤くなったりはしないし、電気を流す場所は耳の裏あたりなので見た目の心配はしなくても大丈夫です。ただただ痛いだけ。
私が実際に受けた検査は鐙骨筋反射と瞬目反射の二種類だけでした。
今になって、ちゃんと確定診断の時に血液検査もしてもらうべきだったと思うんですが、当時はまだ入学したてで検査の事も病気の事もイマイチよく分かっていなかったのが悔やまれます…
顔面神経麻痺の治療方法
まず、顔面神経麻痺の時受診するべきなのは「耳鼻科」です。
かかりつけだから、と深く考えずに消化器内科などに行くのはおすすめしません。
治療の開始が遅くなるとその分炎症が進んで麻痺が強くなったり、治りが遅くなる原因になります。
治療には基本的にステロイドなどの抗炎症薬を使います。
ウイルス感染が疑われる場合は、抗ウイルス薬も併用します。
私が診断を受けた後、最初の説明では1週間くらいステロイドの点滴をして、その後様子を見て服薬治療にしていく、と言われたのですが実際は点滴を3週間毎日続けることになりました。
そのあとの服薬治療は1週間くらいだったので、ステロイドの投薬期間はなんだかんだで1か月くらい。
今となっては確かめる手段がないので何とも言えませんが
ストレスが原因じゃなかったから治りが遅かったんじゃない?と思っています…
ステロイドの副作用~実際に経験したもの~
ステロイドって、使ったことはなくても名前は聞いたことありますよね。
などなど…
ステロイドは挙げだすとキリがないくらいたくさん副作用が報告されています。
しかし、副作用がこわいからとステロイドを拒否したところで他に治療法があるとは限りません。
ステロイドが処方されるのはたいてい「他に使える治療薬がないとき」または「使った方がすぐに症状がおさまって楽になるとき」です。
ウイルス性でない顔面神経麻痺は神経の炎症を抑える以外に治療法がないので、ステロイド投与は不可避だと思っていいと思います。
顔面神経麻痺は炎症がひどくなればなるほど、治療が遅くなればなるほど完治の可能性が低くなります。
ステロイドの副作用は投与をやめればおさまるので、一時のがまんと考えてしっかり治しましょう。
私の場合はムーンフェイス、にきび、肥満が顕著に出ました。
特にムーンフェイスと肥満に関してはただでさえ丸い顔と体が文字通りまんまるになってしまって、その上顔が半分歪んでるんですから大学デビューとしては最悪の形になりました。笑
GWも終わって暑くなり始めた頃で、顔を隠すマスクと汗でベタベタの所へさらににきびが顔中に出ていたので常に痛痒かったのも辛かったですね。
顔面神経麻痺発症後の経過(もこの場合)
3週間のステロイド点滴と1週間程度の服薬を経て、発症から1ヶ月くらいでかなり違和感はあるけど日常的な動きはなんとか出来るくらいまで回復しました。
その後も少しずつ、時間が経つごとに動きが良くなっていくように感じ、現在では違和感もあまり感じなくなってきています(慣れたともいう)。
ただ、今でも発症する前と全く変わらず動くようにはいません。
などの自覚症状があるのですが
家族や友人に言ってもほとんど分からないくらいには良くなりました。
顔面神経麻痺を経験して変わったこと
この病気を経験して個人的に大きく変わったのは
体調の変化が顔に出る
=体調管理がしやすくなったことです。
ちょっと疲れが溜まってくるといつもより顔が垂れたり、瞼が閉じづらくなったりするので
「あ、今私疲れてるんだな」
と本格的に体調を崩す前に気づけるようになりました。
後遺症はどうしても気なってしまいますが、いつも我慢できるだけ我慢して限界が来たら倒れてしまうタイプだったので、この変化は結構ありがたいなーなんて思っています。
デメリットとしては、眉にシワが寄るせいで何とも思ってないのに機嫌が悪いと誤解されることが増えたことでしょうか。
あとは、もともと苦手だった写真がさらに少し苦手になってしまったくらいですね。
おわりに
顔面神経麻痺という病気はあまりメジャーではないものですが、誰でもいつでもなる可能性があります。
自分や身近な人が発症してしまった時のために、次のことだけ覚えておいてほしいです。
この記事が少しでもお役に立てたなら幸いです。
- 宮崎県医師会 健康Q&A;http://www.miyazaki.med.or.jp/ken-ishikai/kenko/face.html
- 船橋市立医療センター脳神経外科(2003年1月1 日作成);https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/neurosurgery/files/Fac-07.pdf
- 人体の構造と機能[第3版]