未経験ながらEC業界のマーケティング課に転職が決まったのがきっかけで、「データ分析」のノウハウを身につけたいと思っていました。
しかし普段データに触れる機会といえば、日々の売上データを日報で報告するくらいで、詳細な分析結果の報告や改善案の提案は上長のお仕事。
今任されている中では自社メディアのウェブマガジン更新が大きなウエイトを占めているため、もしかしたら「データ分析のプロ」になることは期待されていないのかもしれません。
とはいえ、せっかくマーケティング課に配属されたのにいつまでもこのままでいるのはもったいない。
- 「マーケティング課」の実績に恥じないようなスキルを身につけておきたい!
- 期待されてなくてもこっそりできるようになって驚かせたい!
- とかいう建前はおいといて、「データ分析できる人」かっこいい!!笑
そんな一部しょーもない理由で手にとったこの本ですが、自分の中の「データ分析」の概念がガラッと変わる、大事なことがたくさん書いてありました。
この本は、「難しい関数を使いこなすための本」でもなければ「どんなデータもばっちりわかりやすく整理できるグラフの作り方がわかる本」でもありません。
端的に言うと、なんのために「データ分析」をするのか?分析した結果をどう活かせばいいか?
という、基本のキを丁寧にわかりやすく教えてくれる本です。
この記事では「データ分析ド素人」の視点から、タメになったポイントを大きく分けて3つ挙げていこうと思います。
- これから実務でデータ分析をする・始めたばかりの人
- 「データ分析ができるようになるには、Excelの難しい関数を駆使しないといけない」と思っている人
- データ分析には人一倍時間をかけているのに、時間に見合った手応えがないと感じている人
ポイント①「データ分析」に対する思い込みが覆される
この本を読んでから、私がそれまで「データ分析」だと思っていた行為は全く実務に役立たないとわかってしまいました。
すでにデータ分析に携わっているけどなかなか成果が出ないという人は、自分に当てはまることがないかチェックしてみてください。
「データ整理」と「データ分析」は別物!
まず最初に衝撃を受けたのは、目の前にあるデータをグラフにまとめる行為は「データ分析」ではないという事実です。
分析=グラフ化することだとしか思っていなかったので、目からウロコが落ちました。
もちろん生データのままでは分析も何もできないわけですが、グラフ化はただデータを整理しただけで、そこからわかる情報なんてたかが知れている、と。
データを整理(グラフ化)したあとで、じゃあそのデータを使ってどうするか?というのが「データ分析」なんですね。
「データ分析」の”前”に頭を使う!
「よし、担当店舗のデータはあらかた『整理』できたぞ!いざ分析ー!」
と勢い込んで、出揃ったグラフをあれこれイジり回してしまいたくなりますが、ここでちょっと一呼吸。
まずはなんのためにデータ分析をするか?を「グラフをイジる前」に考える必要があります。
なんのために…って、それを知るために「データ分析」するんでしょ?
と思っていました正直。
「何が問題で、どうしたら解決できるかを知るためにするのがデータ分析だ」と。
でも順番が違うんです。
まずは整理されたデータを俯瞰して「ここでこういう問題が起こっているから、こういう結果になっているのでは?」と自分で仮説を立てるところからがスタートです。
データ分析の用途・目的は、”分析者が想定したことを確かめる”ことに他なりません。
(中略)
このような想定を「仮説」と呼びます。仮説はあくまで「思いつき」の域を出ませんが、この「思いつき」が正しいのかどうかを検証するには、現場へ行って自分の目で確かめるか、データで事実と照らし合わせるといった手段が必要です。
(中略)
つまり、一般実務でのデータ分析の直接の目的は、「立てた仮説の検証」だと私は考えています。
p.059
ここでも目からウロコ。
「分析の前にまず仮説を立てる」という発想自体がなかったので驚きでした。
ちなみに、ここでは割愛しますが本書では「仮説をどうやって立てるか?立てた仮説をどう検証すればいいか?」といった部分が具体例付きでわかりやすく書かれています。
作ったグラフを何も考えず「どこに問題点あるかなー」とあれこれ弄り回して、「分析」したつもりになってしまっていた人は必見です。
“答え”はデータの中にある…わけではない!?”
前の項にも通じるところですが
ではないんですね。
どれだけ多くのツールを使いこなしていても、「ここに問題点がありますよー」と教えてくれるわけではないということ。
ツールはあくまで補助的なもので、仮説を自分の頭で考えて、それが正しいかどうかを知るために「分析」をするということ。
データ分析の”答え”とは、自分が立てた仮説が正しいかそうでないかを知るということ。
分析業務に慣れた人にとっては当たり前のことかもしれませんが、ツールの使い方を習得しても自動的にデータの問題点や改善策がわかるようになるわけではないという事実は、これまた目からウロコでした。
もうボロッボロ音立てて剥がれ落ちてます。
本書で紹介する分析方法も、平均、標準偏差、相関関数くらいのことで、実際、大体はこれで事足りてしまうのです。
p.001
と冒頭で書かれている通り、この本には「読み方すらよくわからない難しそうな関数」の話は一切出てきません。
もちろん、データ分析を極めていけばいくほど分析手法の知識もつくでしょうし、難しい関数でしかできない分析もあるだろうと思います。
職種によっては、データ一つ一つの正確さが命ということもあるかもしれません。
しかし、データ分析の専門家でもない限り、「データ分析」で求められるのは「分析結果から会社の利益になる(あるいは損失を回避する)有益な施策が何か突き止めること」であると思います。
そのために必要なものは、平均、標準偏差、相関関数くらいがわかっていれば十分ということを教えてくれます。
何事も形から入りたがるタイプの私。
データ分析に関しても「Excel関数の使い方覚えるための本とか読まないとなー」と思っていたので、グサッと刺さりました。
ツールの使い方を覚えても、「データ分析」ができるようになるわけじゃない。
肝に銘じます…。
ポイント②実務に沿ったデータの「見方と使い方」がわかる
いざ仮説を立て、必要なデータはこれとこれと…とわかったはいいものの、データの期間をどこで区切るか、どんな基準でグルーピングするか、データの前提条件が何か、といった要因によって見え方や得られる結果が異なってきます。
本書の例をお借りすると、例えば目の前にあった「売上」データが、実はポイントカードを使って買い物をした人だけのものだったとしたら、その他のお客さんの情報は全く含まれていない事になります。
自分が分析したいことに合ったデータを使っているか、もっと他に目的に即したまとめ方があるのではないか、といった思考が必要になるということがわかるように解説してくれています。
また、実務の中でいざデータ分析に取りかかろうとしても「必要なデータが全然揃ってない!」
ということも残念ながら起こり得ますが、そんな場合でも「目的に沿って”代替”できるデータで妥協点を探す」ための工夫が書かれているため応用が効くのがうれしいところ。
私は元医療従事者なので「正確じゃないデータで分析なんてしていいの!?」なんて思ってしまいますが、あくまで「データの正確性」より「実務に活かせるデータ分析」の仕方を教えてくれる本です。
論文に載せるんじゃあるまいし、結局大事なのって実際に使い物になるかどうかですもんね。
ポイント③どうすれば「数字が伝わる」ようになるか?
なんのためにデータ分析をするのか?どう考えれば”答え”を見つけられるのか?
ということを丁寧に教えてくれるこの本ですが、さらにありがたいことに「分析した結果はどう伝えるのが効果的か?」という、プレゼンや企画書のことも視野に入れたフォローをしてくれています。
一生懸命考えて、膨大なデータの中から掘り起こした”答え”を、ひとつひとつイチから順に説明したくなってしまう「データ分析初心者」のキモチをよく理解してくれているなーと感じました。
「データ分析には人一倍時間をかけているし、分析に使うデータの選別や分析の仕方も間違っていないはずなのに、なぜかプレゼンでの手応えが良くない…」
と悩んでいる人は、もしかしたら最後の最後で「伝え方」が間違っているのかも。
- 相手のポジション(職位)
- 相手の知識
- 相手の知りたいこと/ほしいこと
この3点をきっちり意識したプレゼンができている自信がない人は、要チェックです。
【書評】それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術:おわりに
なんのために「データ分析」をするのか?分析した結果をどう活かせばいいか?
ということを考えられるようになったのは、「データ分析ド素人」である私にとって大きな進歩です。
今はまだ自分が担当している店舗のデータを十分に整理すらできていない状況ですが、自身の成長のため、会社の利益のため、この本を片手に少しずつ「データ分析」に挑戦していこうと思います。
マーケティングもデータ分析もできる人材に、私はなる!!!!笑